住むを考える
前田有紀さん
フラワーアーティストとして活躍する前田有紀さん。仕事に、子育てに忙しいなかでも住まいに植物は欠かさないという前田さんと、弊社インテリアコーディネーターの猪野と、植物のある暮らしについて語っていただきました。
少しの植物があるだけで
季節のリズムが取り込める
猪野●イギリスに留学して植物を学んだと聞いていますが、ガーデン大国・イギリスの暮らしで、どのような影響を受けましたか?
前田さん●庭で育てた花を摘んで室内に飾るなど、〝草花との距離が近いのが当たり前〟という暮らし方が豊かだなと思いました。庭がないロンドンの都心部でも、ベランダや屋内などの小さなスペースで花や野菜を育てる人が多いんです。それを見て、私も1輪でもいいからなにかしら花を飾ろうと心掛けるようになりました。
猪野●今は生活空間にどんな風に取り入れているんでしょうか?
前田さん●ベランダではハーブを育てているんです。室内ではキッチンカウンターに大きな花ビンを置いて切り花や枝を生けたり、ピクチャーレールを利用してドライフラワーを吊るしたり。それから、丈のある観葉植物も好きで、興味にまかせていろいろ楽しんでいます。
猪野●記念日に植物を取り入れることも大切にされていると聞きましたが……。
前田さん● 誕生日やマタニティ、日々のちょっとした出来事に合わせ、家に飾ったり、ブーケにして一緒に記念撮影したりします。その際、旬がわかりやすいお花を取り入れるのがポイント。後から「アジサイが咲いていたね」という風に振り返ることができて、季節と暮らしが近づくのでいいと思うんです。
視覚、嗅覚、味覚 植物に五感で癒される
猪野●日常の暮らしのなかで、どんなこところに植物の魅力を感じますか?
前田さん●気持ちを切り替えさせてくれることでしょうか。朝、ベランダに出て植物に水やりすると風に触れてほっとしたり、ミントの葉を1枚摘んで水に浮かべただけで香りが豊かで驚いたり、植物の生長に喜んだり、触ってやわらかさを感じたり……。大自然の中に住んでいなくても、自然の息遣いを感じることができます。
猪野●五感で楽しめますね。
前田さん●そうですね。そういう意味では、ハーブはおすすめです。摘んで飾るだけで香りに癒されますし、お料理にも使えます。清涼感があるので夏場は特にいいですよ。スーパーで買ったものとは鮮度や香り方が違って、うれしくなります。丈夫な植物なので、慣れていない方でも育てやすいですよ。
季節や気分で植物の飾り方を変え
生活空間に変化をつける
猪野●インテリアに植物を取り入れるとき、どんなことを大切にしていますか?
前田さん●今は、マンションで暮らしているのですが、どうしても画一的な構造で単調になりがちなので、植物で空間に変化をつけるようにしています。季節ごとに飾る位置、飾る植物を変えて、室内でも季節を感じられるようにするというか。
猪野●このモデルハウスをご覧になって、そのあたりはどう感じましたか?
前田さん●オープンな飾り棚がたくさんあるので、草花をいろんなところに飾れていいですね。オープン棚は収納物だけでなく、植物を加えることで見え方がやわらかくなります。高い位置の棚にアイビーなど枝垂れるタイプの植物を置いてみるのも動きが出て素敵だと思います。
猪野●なるほど。いいですね。
前田さん●切り花や鉢花がうまく飾れない……という場合は、大きな観葉植物の鉢をひとつ置くだけでも様になります。部屋の雰囲気がガラリと変わりますよ。おすすめは「ウンベラータ」や「エバーフレッシュ」。ウンベラータはお日様が大好きで、窓辺など明るい室内に置くのがオススメです。エバーフレッシュは夜になるとピタッと葉を閉じて、1日のなかでも変化が楽しめます。日本のように湿気のある環境でも育てやすいですよ
植物と融合する
理想のインテリアとは
猪野●植物が映える空間にするために、インテリアで工夫できることはあるのでしょうか?
前田さん●私は、植物の個性を生かしたいので、できるだけ植物以外の色数を抑えるようにしています。家具も主張しすぎないデザインや色素材を選ぶこともポイント。素材としては、床や壁も植物がより馴染む自然素材が理想です。
猪野●このモデルハウスも自然素材を多く取り入れています。
前田さん●そうですよね。こちらにうかがってすぐに、無垢材の床が気持ちいいなと感じました。漆喰も塗り跡が出ているとナチュラルな表情が出ていいですね。実は、今住宅を計画している最中なんです。参考になります。
猪野●そうなんですね!では、植物のために何か設える予定もあるのでしょうか?
前田さん●ドライフラワーや観葉植物のハンギングラックを何か所かに設ける予定です。ドライに向く植物はたくさんあるので、そういったものを吊るしてドライになる過程を楽しむのもいいですよ。あとは、外の木が見える位置に窓を設けたいと思っています。
猪野●景色を取り込んだインテリアですね。前田さん●自然素材もそうですが、このモデルハウスには広い土間があっていいですね。自分の考えにはなかったのですが、お花の作業をするのにも勝手がいいなと思いました。
猪野●最近、趣味のスペースとして設ける方が増えてきているんですよ。
前田さん●夫はアウトドアが趣味なんですが、そんな道具の置き場にもいいですね。ほかにも子どもの遊具を置いたり。短時間でいろいろな想像が膨らんでしまいました。
猪野●特に自転車が好きな方とか、ペットがいる方などにおすすめです。小さなお子さんがいらっしゃる場合は、土間に手洗い場を設けるとより便利ですよ。お子さんが泥んこで帰ってきても安心です。
子育て目線で考える
理想の家とは?
猪野●子育てをするうえで、住まいに希望することはありますか?
前田さん●先にも少しお話ししたのですが、まずは「自然素材」ですね。植物との相性もあるのですが、できるだけ安心で空気がきれいな家がいいなと。
猪野●無垢材はとても肌触りがよくて、香りも少し違います。ここで、お客様に裸足で歩いていただくこともあるんですよ。最近はアレルギーをお持ちのお子さんが多いので、素材にこだわる方が増えています。
前田さん●そうですね。手で触れるだけでも気持ちがいいです。視覚的にも木の面積が広いとなぜかほっとしますよね。
猪野●間取りはいかがですか?
前田さん●生活と仕事の中心的な場所となるLDKを広くとりたいですね。私の場合は、お花の作業をするのも自宅のLDKですし、子どもがまだ小さいので、様子をうかがいながら作業をする必要があります。普段の暮らしに必要なものに加えて、子どもや仕事のためのものも同時に置かなくてはいけませんので、スペース的にもゆったりしつつ、どこにいても子どもに目の届くようなオープンLDKが理想ですね。
猪野●常に子どもに目を配れるということは大切ですね。
前田さん●こちらのモデルハウスのように、1階のスタディコーナーや、それぞれ2階の寝室の窓と廊下とつながるLDKの2か所の吹き抜けなど、家族が近くにいる、近くに感じられるようなアイデアが素敵だなと感じました。
デザイン重視から
暮らしやすさ重視へ
猪野●お子さんが生まれてから、住まいに求める考え方は変わりましたか?
前田さん●以前はどちらかというとデザインに関心があったのですが、子どもが生まれてからは動きやすさや安全性など、暮らしやすさに目が向くようになりました。そうして心地よく整えた環境に植物を加えて、自分らしいインテリアをつくっていけたらいいなと思っています。
猪野●見た目だけではなく、機能性を重視するということは非常に大切なことですね。弊社でも水回りをまとめて家事動線をスムーズにする「らくまま動線」の生活提案が好評いただいています。
前田さん●拝見して、すごくいいなと思いました。今はお仕事を持つお母さんも多いですから、家づくりの工夫で家事を助けてもらえるのはうれしい限りです。
猪野●お子さんと植物を楽しむ計画は?
前田さん●大きくはないのですが、新居には庭を設ける予定で、季節を感じやすい植栽をしたいなと考えています。室内には観葉植物のほかに1輪でも季節の花を飾って、季節が巡ることを知ってほしいですし、ベランダで野菜やハーブを育てて、植物がこうして育つんだという過程も見せたいなと思っています。
猪野●夢が広がりますね。
前田さん●新居はまだ構想段階ですが、子ども、家族、そして住まい自体も豊かに成長していけるそんな「わが家」になればといいなと考えています